壁と静電気―「そこに僕はいた」
「そこに僕はいた」 という辻仁成氏のエッセー。
大学生の時に社会人の方と組んでいたバンドで、ボーカルさんに教えてもらって読んだ本です。
私は大学時代の大半を函館で過ごしました。この本には筆者が中学~高校時代に過ごした函館での記述があるので、余計に面白く読めます。
18のエッセーから成っているので、さらさらと読むことができます。
中でも私が一番好きなのが、「ゴワスが行く」という話の以下の記述。
“ (ちょっと付け加えておくが、ゴワスの歩き方がまたかわっているのである。彼は俯いて壁伝いに歩くのだ。傘を持っているときはずっとそれで壁を叩きながら歩き、無いときは掌だった。どうしてそんなふうに歩くのかと尋ねたことがあるが、彼はひとこと、静電気、と意味不明のことばを発した。今もってそれがどういう意味か僕にはわからない)”
「そこに僕はいた」 73ページより引用
この一節が意味不明ですが何故か好きです。分かるような、わからないような。放電か蓄電かと言えばおそらく放電でしょう。
辻仁成氏の生き様に共感はできませんが(辻仁成 - Wikipedia 参照)、この一節を上梓したことは日本文学において確かな足跡となるでしょう。
ちょっとヨイショし過ぎましたかね…。