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半可通素人

哲学から魚のお話まで。半可通素人が書き散らかすブログ。

瀬を踏んで淵を知るべし:川について知ってみよう

   先日の記事(夏になるとどうして自分だけ?という思いをする - 半可通素人)で、大学生の頃は川のフィールド調査をやっていたと書きました。外は毎日嫌になる程暑いし少しは涼しげな話題をということで、この機会に川についての話を簡単に書いてみたいと思います。

 

http://www.flickr.com/photos/48012277@N05/6547048123

photo by Eric Leslie

 

◆本来の川の姿

   アマゾン川を思い浮かべていただくと分かるかと思いますが、川というのは平野部の中〜下流域においてはクネクネと蛇行しているのが本来の自然な姿です。川が何故蛇行するかは、以下のページに分かりやすく説明している動画が紹介されているのでご参照ください。厳密には正しいとは言い切れない部分もありますが、大まかに理解するにはこうした動画での説明というのは見た目に分かりやすく効果的です。
 
   川岸が生物の作用や水流によって削られると流れが不均一になり、水が強く当たる所は削られる一方流れが弱くなる所には土砂が堆積していきます。また硬い岩盤などがあれば当然流れが妨げられ、流れが不均一になり、水が強く当たる所は…という作用が働きます。こうした「陸地を削る、土砂を運び堆積させる」という水流の働きにより、年月を経るごとに蛇行のカーブが大きくなり、時には蛇行部のショートカットが発生するなど川はその姿を刻々と変えていくのです。
 
   蛇行部において、カーブの外側は岸がえぐられて水深が深くなり、流れが淀んで緩やかな「淵」が形成されます。一方蛇行部の内側は、土砂が堆積していき浅くなります。そして蛇行部と次の蛇行部をつなぐ間の区間も、蛇行部の内側と同様に土砂が堆積することで水深が浅くなり、流れが速い「瀬」となります。川釣りをする人は分かると思いますが、こうした「瀬ー淵の連続構造」というのが川の基本的な構造です。瀬淵構造の更に詳しい説明はこちらこちらをどうぞ。
 

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 非常に下手くそな絵で恐縮ですが、前述の説明を図にするとこのような感じになります。左側が蛇行している川で、黒い線で見た断面が右側です。このように水の流れによって蛇行部の外側が深くなって淵になります。
 

◆日本における川

   地形的に見た川の基本知識をご紹介しましたが、こうした川の自然な姿という点からは日本の川は大きく離れていると言えます。日本においては狭い国土に人が密集して住まざるをえず、特に都市部において
  • 川のギリギリ近くまで土地を使わなければならないという土地利用
  • 豪雨時の増水による氾濫の被害から人間の生活圏を守る治水
を行わなければならないという事情があります。こうした主に2つの理由から、日本では蛇行していた川を直線化し、更には治水強化のために護岸工事を施し、さながらただの水路のような川にしてきたという歴史があります。
   人間の生活にとっては「暴れない川」というのは都合が良いです。しかし川を生息場所とする生物、特に魚や水生昆虫にとってはどうでしょうか。
 
   生物はそれぞれの種にとって適した生息環境というのがあり、それぞれの生息に適した場所を選択して生きています。従って多様な生物が生息するためには多様な環境が存在することが欠かせません。逆に言うと、それぞれ適した生息環境に棲み分けることで種間の過剰な競争を防ぎ、生存率を高めるという自然の巧妙なメカニズムが働いています。
 

◆川の直線化が及ぼす影響

   こうした観点で見た時に、日本において多く見られる直線化された川という環境は前述の「瀬ー淵の連続構造」が失われ、ほとんど真っ直ぐに水が流れていくので流れが速く、水深もおおよそ一定です。こうした場所にはその一定の環境に適応した種しか棲めず、瀬や淵などの多様な環境によってもたらされる生物の多様性が失われてしまいます。
 

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 再び下手くそな絵で書くとこうなります。流れが速く大体において浅いので、流れが緩やかな場所、深い場所に棲む生物は生きることができません。さらに川底にある土砂もどんどん流されるので安定せず、石の裏などに棲む水生昆虫の生息もできなくなります。この「川底の土砂の安定度」というものもあまり知られていませんが重要で、底に棲む水生昆虫や貝類などが定着できるかどうかの指標になります。人間にしてみれば安定しない川底は家がしょっちゅう流されるようなものです。そんな所には住めませんね。
 
 このように人間にとっては都合の良い川の直線化ですが、川の環境とそこに生息する生物にとっては大きな負の影響を及ぼすことになります。
 
 
 ざっくりとですが、川についての概説を紹介しました。川はただ流れているだけのように思われがちですが、そこには大きな自然のメカニズムと生物の営みが微妙なバランスを持って成り立っています。人間も生物のひとつですが、自己の都合を優先するあまり環境をないがしろにすると自らの首を絞めることになるということを改めて肝に銘じたいものです。
 
 ちなみにタイトルの「瀬を踏んで淵を知る」とは、「川を渡るときは水の深いところを避けるためにまず浅瀬から入るように、物事に当たる時は初めに試してみて正確な状況をつかみ、それから先に進めるようにすべきだ」という教えを意味することわざです。
 
 
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