半可通素人の漂流

哲学から魚のお話まで。半可通素人が書き散らかすネットの海を漂流するブログ。

Teach For Japan、クロスフィールズ、ヒューマン・ライツ・ウォッチという変革者たち − ソーシャルビジネス話の続き(その2)

   前々回、前回と書いている社会的企業に関するフォーラムの覚え書きの続きです。遅筆で恐縮です。
 
   この日は米倉誠一郎氏、NPO法人フローレンスに加えて、NPO法人Teach For Japan、NPO法人クロスフィールズ、国際人権NGOヒューマン・ライツ・ウォッチといったソーシャルビジネスを手がける団体が登壇していました。以下にそれぞれご紹介します。

 

◆Teach For Japan

   Teach For Japanのミッションは「教室から社会を変える」です。人材を採用し、研修を受けさせて教師(フェロー)として2年間学校に派遣します。何故教室かというと子供達がそこで1日の大半を過ごす場所だからであり、教師という子供達に大きく影響を与える存在が教室で多くの子供に接し、支援することで様々な社会課題を変えていこうとしています。
 
   子供達を取り巻く環境は日々深刻さを増しています。以前も書きましたが、豊かと思われているここ日本において、子供の6人から7人に1人は貧困状態にあるという実態があります(第3節 子どもの貧困|平成26年版子ども・若者白書(全体版) - 内閣府)。そして貧困問題の根が深いところは、親の収入に応じて子の学力に差が生じることが明らかになっており、その学力の差が進学率の差に繋がり、結果として学歴差が収入の差に帰結し、その子供もまた貧困状態に陥り…という悪循環を形成するところです。貧困状態に陥るとそこから抜け出すのは困難であり、世代を超えて困窮するという恐ろしい落とし穴が社会にぽっかり口を開けているのです。
 
   こうした悪循環を断ち切るため、Teach For Japanは学校教育の質を高め子供達の成長を促し、また教師を派遣することで教育問題に当事者意識を持つ人を増やし社会全体を課題解決に巻き込むことを意図して活動しています。2年間の派遣期間を終えた後は教師として教育現場に残る人が殆どだそうですが、再びビジネスの世界に戻る人もおり、沢山の子供を相手にすることで培われたリーダーシップがそれぞれのフィールドにおいて高く評価されるそうです。そうした社会で活躍できる人材の育成という側面も持っています。この事業は元々アメリカでTeach For Americaという活動が行われており、そのモデルを日本にも持ち込んだ格好です。今や世界の多くの国で同様の活動が行われています。
 
   このブログでもちょくちょく教育の話を取り上げますが、教育はまさに国の根幹に関わる問題です。多くの課題がありますが、強者の理論を振りかざす社会のしわ寄せが社会の未来を担う教育に及ぶという構造はどう考えても不健全です。誰もが我が事として教育を捉えなければ問題は解決に向かいません。そのための取り組みとして注目すべき活動だと思います。
 
Teach For Japanではこのフェローシップ・プログラムの魅力を伝える説明会を予定しています。以下にご紹介しますので興味がある方は是非ご参照ください。
 
--------------<フェローシップ・プログラム説明会>----------------------------
 9/5(土) 16:00~17:30 @TFJ東京オフィス 
(イベント終了後、ご希望の方は代表理事松田とじっくりお話いただくお時間を設けております)
*申込みはこちらから
会場住所: 東京都港区新橋6-18-3 中村ビル4階
アクセス詳細:
御成門駅」A4出口を出て、正面の通りを直進(右手にサークルKサンクスあり)。
1ブロック分、直進、ベルサール御成門駅前と三菱東京UFJ銀行の間の通りを右折。
約2ブロック分直進し(途中、コインパーキングあり)、左手に「ゴルフダイジェスト社」ビルを確認。右手「中村ビル」の正面右手通路奥より、4階に移動。
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◆クロスフィールズ

   クロスフィールズの活動は「留職プログラム」というものです。これは「留学の仕事バージョン」のようなイメージの造語ですが、いわば「企業版青年海外協力隊」といったところです。企業で働く人材が新興国NPOなどへ一定期間赴任し、本業で培ったスキルを活用して現地の人々と社会課題の解決に挑むというプログラムを実施しています。新興国側にとって日本の技術を導入できる利点があるのはもちろんですが、企業にとっても現地の人の生活や需要を直接知ることができ事業展開に活かせることや、海外で活躍できる人材を育成することができるという利点があります。
 
   これはよくできた仕組みだと思いました。実際にプログラムを経験した方の紹介動画も流され、訪れた国の人に役立つだけでなく、自身も大きく成長できる機会になるということがよく分かりました。現地では日本のように設備や環境が整っておらず、その中である物から工夫をして成果を出さなければなりません。日本の環境がいかに恵まれているか、自分が会社というハコにいかに依存して仕事をしているかということを身を以て体験することになります。そして苦労して課題を解決すれば現地の人にとても感謝され大きなやりがいを感じるし、制約がある状況で課題を解決したという経験が日本に戻ってからも大きな財産になると話していました。
 
   所属する企業がこのプログラムに参加する必要がありますが、非常に興味を引かれる事業です。
 

ヒューマン・ライツ・ウォッチ

   アメリカに基盤を持つ国際的な人権NGOで、世界90ヶ国で人権状況をモニターしている団体です。日本においては弁護士の土井香苗氏が代表となり東京事務所を開設しています。
 
   世界においては至る所で人権侵害や弾圧が行われているのが現実です。ヒューマン・ライツ・ウォッチでは「調べる→知らせる→世界を変える」という方法論を用いて人権擁護活動を行っています。
   「調べる」では現地に調査員が赴いて状況を徹底して調べます。例えば紛争地帯では使われている兵器がどのようなものであるか、調査員が不発弾を実際に見るなどして現地で得た情報を本部に送ります。本部には兵器に詳しい「兵器マニア」がいるそうで、現地からの情報を基に兵器の種類、威力、製造元などが詳しく分かり、それにより誰がその兵器を使用したのか、どの国が供給したのかが分かるということです。
   「知らせる」フェーズでは冊子の刊行や、地域メディアおよび国際メディアへの情報提供を駆使して広範囲に報道し、社会の注目を集めます。
   そして人権侵害を行っている当事者に対して政策提言やロビー活動を行い「世界を変える」のです。
 
 
   以上、ソーシャルビジネスに関する覚え書きを終わります。民間の知恵で社会を変えるという変化は着実に起こっています。登壇者の方々は今は担い手が少なく、どんどん人に来て欲しいと言っていました。これからの選択肢の一つとして要注目です。