ゴーストの囁きに耳を傾けよ
「そう囁くのよ、あたしのゴーストが」
これだけで何のことか分かる方も多いと思います。先日映画新作が劇場公開され話題となっている「攻殻機動隊」というアニメの主人公、草薙素子がよく口にするセリフです。原作は士郎正宗氏の漫画ですが、アニメシリーズで派生作品が多く制作され、海外を含め沢山のファンがいます。当初私は「こうかくきどうたい」というタイトルを聞いて、何か甲殻類の蟹とか海老とかが出てきて戦うのかなというイメージが先行したばっかりに食わず嫌いしていました。しかし遅まきながら去年初めて「STAND ALONE COMPLEX (S.A.C)」というシリーズを観て、今まで見なかったことを後悔しました。
攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX - Wikipedia
そしてS.A.Cシリーズと呼ばれる2nd GIG、Solid State Societyを一気に観ました。映画新作に先駆けて東京MX系でアニメが放送されていましたが、これも鑑賞。
作り込まれた世界観、緻密な構成、魅力的な登場人物。そして何より物語を通して「人間とは何か」という問いを投げかけています。本作では人間の身体はほとんどが義体と呼ばれる機械化をされています。脳さえも電脳化と呼ばれる機械化が進んでおり、人を形作る構成物としての肉体にほとんど意味はありません。では人を人たらしめているものは何か。そこで出てくるのが冒頭の「ゴースト」という概念です。これは人間が本来的に持つ自我や意識、霊的な属性を表す包括的な概念ですが、肉体が機械で交換可能でありその意味を消失した世界において自分が自分であるために必要なものとして描かれます。